製造業の事例:毎日届く添付メールの保存を自動化して戻した時間の話
結論から
私が支援しているある製造業の会社では、毎日大量に届く添付ファイル付きのメールを、手作業で1件ずつ開いて保存する作業が発生していました。そこで、安全な添付方式のメールを自動で開封し、決められた場所に保存する仕組みを作り、実際に運用しています。この記事では、その困りごとの内容と、どう解決したかを紹介します。削減できた時間の具体的な数字は現時点で未計測のため、この記事では明記しません。
困りごとの場面
製造業の現場では、取引先や仕入れ先、社内の他部署から、日々多くのメールが届きます。その中には、見積書・仕様書・注文書といった、業務に直結する添付ファイルが含まれるものが少なくありません。
このメールの多くは「安全な添付方式」、つまりファイルを直接添付するのではなく、パスワード付きで圧縮されていたり、専用の受け取り手続きを経てダウンロードする形式のものでした。セキュリティの観点では理にかなった方式ですが、受け取る側には毎回、メールを開く、パスワードを別途確認する、ファイルを展開する、正しいフォルダに保存する、という一連の手作業が発生します。
この作業は1件あたりは数分程度でも、毎日何十件と積み重なると、担当者の集中力や時間を確実に奪っていきます。しかも「うっかり保存し忘れる」「フォルダの場所を間違える」といった小さなミスも起きやすく、後から探し直す手間まで発生していました。
さらに厄介なのは、この作業が「誰か1人の担当業務」として固定化しやすい点です。担当者が休みの日には処理が止まり、後でまとめて対応する必要が出てきます。属人化した繰り返し作業は、当人が気づかないうちに、その人の時間の使い方そのものを縛ってしまいます。私が現場でヒアリングをしたときも、「これがなければもっと他の仕事に集中できるのに」という声が印象に残っています。
実際に行った手順
- 現状の作業を洗い出す:どのメールが対象か、添付方式の種類、保存先のフォルダのルールを整理しました。
- 自動化できる範囲を切り分ける:安全な添付方式の受け取り手続きは仕組み上、完全な無人化が難しい部分もあるため、「自動化できるところ」と「人の確認が必要なところ」を分けました。
- 開封・保存ツールを作成する:対象のメールを検知し、添付ファイルを自動で取得・展開し、決められたルールに沿って保存先のフォルダに振り分けるツールを作りました。
- 試験運用で例外パターンを洗い出す:実際に動かしてみると、想定していなかった形式のメールや、フォルダ名の表記ゆれなど、細かな例外が見つかりました。これを1つずつ潰していきました。
- 本運用へ移行し、定期的に見直す:現在も実際の業務で運用を続けており、新しい取引先が増えるなど状況が変わるたびに、必要な調整を加えています。
あわせて、この会社では見積書作成に使っているExcelのマクロ(VBA)ツールの改修も行っています。添付ファイルの自動保存とは別の取り組みですが、どちらも「担当者が毎日繰り返している定型作業を、機械に任せられる部分は任せる」という考え方は共通しています。
なぜ「完全な無人化」を目指さなかったか
この事例で意識したのは、すべてを自動化しようとしないことです。安全な添付方式のメールは、セキュリティ上の理由があって設計されている仕組みです。その手続きを無理にすべてスキップしようとすると、かえって取引先とのやり取りにトラブルが生じたり、社内のセキュリティ方針に反したりするおそれがあります。
そこで、機械的に判断できる部分(メールの検知、ファイルの取得、フォルダへの振り分けなど)は自動化し、人の判断が必要な部分(想定外の形式のメールへの対応、内容確認が必要な重要書類の扱いなど)はあえて人の手に残しました。この線引きを最初に決めておいたことで、後から「自動化しすぎて困る」という事態を避けられています。
運用を始めてから見えてきたこと
試験運用の段階では、想定していなかった形式のメールが定期的に見つかりました。取引先によって添付ファイルの命名規則やフォーマットが微妙に異なっていたり、フォルダ名の表記が「見積書」「見積り」のように揺れていたりと、実際に動かしてみて初めて分かる例外が多くありました。
こうした例外は、最初からすべてを想定してルールを作るのではなく、実際に運用しながら1つずつ拾い上げて調整していくほうが現実的です。完璧な仕組みを最初から目指すのではなく、まず動く形にしてから育てていく、という進め方が結果的にうまくいきました。
自動化前後の比較
| 自動化前 | 自動化後 | |
|---|---|---|
| メールの確認 | 都度手動で開封・確認 | 対象メールを自動で検知 |
| ファイルの展開・保存 | 1件ずつ手作業で展開・保存 | ルールに沿って自動で振り分け |
| 保存先の間違い | 表記ゆれやフォルダ間違いが発生 | 決められたルールで統一 |
| 担当者の負担 | 毎日一定の作業時間を占有 | 例外対応のみ人が確認 |
削減できた時間は感覚としては小さくないものの、正確な数値としてはまだ計測できていません。数字を断定できない以上、この記事では「担当者の手作業が大きく減った」という事実だけをお伝えします。
運用の続け方
こうしたツールは、一度作って終わりではありません。取引先が増えれば新しい添付方式が出てきますし、社内の保存ルールが変われば振り分け先の設定も見直す必要があります。私はこの会社に対して、月額制のサポートというかたちで、こうした継続的な調整に対応しています。難易度と想定対応時間に応じた段階を設け、月ごとの対応上限を決めたうえで、大きな追加機能が必要になった場合は別途見積もりにする、という組み方です。
日々の小さな調整は月額の範囲で拾いつつ、根本的に仕組みを作り変えるような大きな変更は別扱いにすることで、会社側も費用の見通しを立てやすくなります。この型については、別記事で改めて詳しく紹介する予定です。
判断基準:向く会社/向かない会社
向く会社:毎日決まった形式・決まった取引先からメールが届く業務がある会社。添付ファイルの保存ルールがある程度決まっている(または決められる)会社。
向かない会社:メールの内容や添付方式が毎回大きく異なり、判断そのものに専門知識が必要な業務。この場合は自動化よりも先に、業務のルール自体を整理するところから始めるほうが適しています。また、セキュリティ上の理由で外部の目に触れさせたくない情報を扱う場合は、社内で完結する体制を前提に慎重に設計する必要があります。
まとめと次の一歩
毎日の添付メール処理は、多くの製造業の現場で「当たり前だから」と見過ごされがちな作業です。しかし1件あたりの手間は小さくても、積み重なれば担当者の時間を確実に占有します。仕組み化できる部分とできない部分を切り分け、できる部分から着実に自動化していくことで、現場の負担は目に見えて変わります。
自社にも似たような繰り返し作業がないか、まずは無料相談で今の状況を聞かせてください。
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